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社長コラム

『蚊取り線香』

2016年8月 1日掲載

 車は、福岡ヤフオクドームに向かっていた。この日、3万人が集まる会場へ通じる大通りでは、既に渋滞が始まっていた。
『ちょっと狭い道を通りますので、この先は蚊取り線香をして運転します』
 彼はそう言うと、ハンドルを右に切った。
「えっ、何ですか? それ」
 私が思わず聞き返したこのやりとりは、梅雨の最中(さなか)、タクシーの車中でのことで、九州へ渡って六日が過ぎた日曜日のことだった。
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『蚊取り線香といえば、キンチョウでしょ』
「えっ?」
『細い道なので、緊張(キンチョウ)して運転します!という意味ですよ』
 となりのシートに座っていたわが家の実力者は、既にクスクスと笑い出している。
「あーっ、金鳥の蚊取り線香か! あーっ、なーんだ!・・・やだなぁ!」
 週間天気予報は当たり、六日間の行程の内、晴れたのはこの日だけだったが、久しぶりの青空は、やはり、私の気分を軽くさせていた。
「ドライバーさん、ダジャレがお好きなんですねぇ!」
「お酒の席でも、それ、やるんでしょ」
 今度は、私から話しかける。
『えぇ、つい、やってしまうんですけど、若い女性にはさっぱり受けませんねぇ!』
『オヤジギャグって、バカにされますっ』
「いやいや、そんなことないですよ、いけますよ、ドライバーさん! 俺も使いたくなっちゃったなぁ・・・。このギャグ、群馬に持ち帰ってもいいですか!・・・ねぇ師匠!」
 ここまで来ると、わが家の実力者の笑顔は(ああ、またいつものヤツが始まった)と、あきれ顔に変わっている。車は(緊張の細道)が功を奏し、一度も渋滞にはまることなく、会場に着いた。「これ、ギャク代です!」と、ドライバーにチップを渡し、車中での笑いの場面を、さも自分で作り上げたような気分でいた私だったが・・・。「いや、待てよ・・・。」この原稿を書くうち、気掛かりなことが生まれた。会話の種を蒔いたのはタクシーのドライバーで、彼の思惑通りに芽を出して盛り上がり、気持ち良くさせてもらっていたのは、「実は、この私ではなかったのか!」そのことだった。『まあ、素直なお客だったな。』一人になった車内で、福岡弁でつぶやくドライバーの笑顔が、頭に浮かんだ。

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