社長コラム
『ある土曜日の朝食』。
2022年5月 1日掲載
彼岸の入りから1日経った3月第三土曜日の朝。
少し前まで囀(さえず)っていた小鳥達も、その日の稼ぎに飛び立って行った。
時刻は8時を回っていたが、私はまだベッドで横になっていた。
体温は38.6℃。
7か月ぶりに味わう倦怠感である。
「イテテテテ。」
寝返りを打つと、注射をした左腕がズキンと痛む。
『3回目は、副反応が意外と重い・・・。』
噂は耳にしていたが、まんざら嘘ではなかった。
この前日、私は新型コロナワクチンの3回目接種を受けたのである。
・・・2回目の接種は7か月前だった。
ほとんどの意見は、『大変だから、やめた方がいい。』だったが、『いや、大丈夫だったよ。』という一人の実体験(本人からではなく、伝え聞いた話)に同調し、私は翌日にゴルフを1ラウンドプレーした。
(試してみなけりゃわからない!)と思う癖は、子供の頃からあまり変わっていない。
その結果、散々な目に合ったことは、記憶に新しい。
確かな教訓を得た私は、「翌日のゴルフは絶対ダメ!」と、あとから接種を受けるゴルフ仲間に触れ回った。
『わかった、そうするよ。』と答えた仲間達が、(そんなこと言われなくても、ふつう、判断が付くだろ!)と心の中で呟いていたことは、みなさんお察しの通りである。
・・・『何が食べたい?』
ベッドで大袈裟に苦しむ私を面白そうに観察しながら、わが家の実力者が言った。
30分後、1階のキッチンから上がってきた焼き魚とみそ汁のいい匂いに、思わず、グゥーっと腹が鳴った。
毎朝、6時に鳴り出した目覚まし時計を7時30分までやり過ごす彼女だが、(なるほど、実際はこの匂いで目を覚ましていたのだな。)
立場が変わって本当のことが分かることがある。
『ブッ、ブブッ』
スマホのメールで、支度が出来たと知らせが届いた。
(たまには、こういうのも悪くないな・・・イテテテ。)
泣き笑いをしながら、私はゆっくりと階段を下りた。