6月第四火曜日。
私は、朝6時までに許されていたコップ1杯の水を飲み干した。
創業時から毎年受けている人間ドックは、今年で27回目になる。
『ヨシザワくん、健康維持は社長にとって、重要な仕事の一つだよ。』
当時35歳の新米社長に、先輩経営者はそう言った。
8時30分。
私は1年ぶりに、群馬中央病院健康管理センターにやってきた。
受付後、個別のソファーに腰かける。
このソファーはリクライニング式なので、なかなかに快適である。
午前中の検査が終わると、水分補給が許される。
6時間ぶりのドリンクは、(夜のビールよりも美味い)と、この瞬間は思うのである。
そして。
『みなさま、お疲れ様でした。お食事の準備が出来ました。』
スタッフの声が掛かる。
15時間ぶりの昼食は、ドックでの楽しみの「一つ」である。
昼休みの後、受診者全員を対象とした健康指導セミナーが開かれる。
毎年聴く内容だが、今年は何故か、いつにも増して耳が痛く感じながら、1日目のスケジュールを終えた。
翌朝。
同センター・内視鏡検査室の待合室に、心細そうな私の姿を見ることが出来る。
私にとってドック最難関、『胃カメラ』の時間が迫っていたのである。
生涯27度目。
この分野ではベテランの域に達する私だが、名前が呼ばれるまでの時間がなんともドキドキする。
『ヨシザワカズオさーん、検査室へどうぞ!』。
「ヨシッ」と腹を決めての5分間。
今回も涙が止まらなかったが、これも健康のためである。
涙を拭きソファーに戻ってくると、既に検査結果が主治医のパソコンに届いている。
主治医のIドクターとは、たまにゴルフや酒を共にすることがある間柄だ。
『社長は、運動量に比べて、ちょっとだけ酒の量が多いかなぁ・・・。』
実際には、『ちょっと』で到達するような数値ではないのだが、彼のアルコールに関するコメントは、やや厳しさを欠く。
『I先生もお酒が大好きですからねぇ・・。』診察室を出た私の耳元で看護師さんが楽しそうに囁く。
ドックでの「もう一つ」の楽しみは、健康状態がすべてA判定(異常なし)であることだが、ご想像の通り、そちらは来年への持ち越しとなった。