2月28日。
打合せに来社したデザイン会社の社長O氏と、二人の共通の友人が経営する手打ちそばの店で昼食をとった後、事務所に戻り、このページを開いた。
蕎麦屋からの帰り道、車のディスプレイに表示された外気温は18℃。
すっかり春の陽気で、少し強く吹く風も暖かく心地よかった。
しかし、まだコラムのテーマは決まっていない。
私は社長室の椅子に腰かけたまま天井を見上げ、椅子を左右に回していた。
そこへ、『社長、A様の奥様がショールームにお見えですよ。』と、営業チームのリーダーであるキグレさんが私を呼びに来た。
A夫妻は、私の弟『カツノリ』の友人で、A氏は私のことを『カズオさん』、夫人は『カッちゃんのお兄ちゃん』と親しげに呼んでくれる。
弟の友達ではあるが、私との付き合いも40年近くに及ぶ。
この日は、A氏実家の雨漏り修理の代金を夫人が支払いに来てくれたのである。
ついでに言うと、二人の結婚式の司会は私で、その指南役が実家に住むA氏の父親だった。
しばらく彼女と談笑する内、A氏が40年勤めた会社を退職することを聞いた。
彼らは、私より三つ年下であるから、今年還暦を迎えるのだ。
「じゃあ今度、こーちゃんの店にみんなで集まって、退職祝いと還暦祝いをやろう!」
私は、ショールームをあとにするA夫人に約束した。
『こーちゃんの店』とは、以前このコラムにも登場した『焼肉こまれ』のことで、こーちゃんは私の幼なじみであり、A夫妻や私の弟にとっても、友達なのである。
彼女の来店により、原稿が書き進められたが、朝から気掛かりだったことが次第にその重みを増していった。
実はこの夜、その『焼肉こまれ』で、私の同級生数人と宴席が予定されていたのである。
この数日、夜の外出が続いていた私は、このことをわが家の実力者に直接話す勇気を持てずにいた。
「今夜、こまれまで送ってもらえますか?」
日も西に傾き、集合時間まであと1時間半。
LINEで送信したメッセージには、未だ既読の文字が付かない。