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社長コラム

2026/09/30 その他

『鍋(なべ)の話』

9月の第2土曜日。

私はインフルエンザに罹(かか)った。

4日に及ぶ隔離生活では、私の食事はすべてわが家の実力者が作ってくれたが、床上げを翌日に控えた最後の晩は『塩ちゃんこ鍋』が登場した。

塩味のスープに鶏肉、豆腐、油揚げ、白菜やネギなどの野菜がたっぷり入っていた。

秋の長雨で気温が低くなっていたこともあり、その温かさと味は私の体に沁みこみ、おかげで翌日から社会復帰を果たせた。

実力者に感謝するばかりである。

さて。

『鍋』となると、私も話したいことがある。

私が20歳になるかならない頃であったから、40年以上も昔のことになると思うが、私はその味に遭遇した。

当時勤めていた職場の先輩に連れられて寄った店で、行ったのはその一度だけだったので、場所も店の名前も覚えていないが、そこで食べたのが、味噌味の鍋だった。

その味が、なんとも印象的で「おいしいです、この味はどうやって出すのですか?」

まだ若かった私は、店主に向かって味の秘訣を訊ねたのである。

その失礼ともいえる私の質問に、彼は意外にもあっさりと答えた。

いちど店の奥に引っ込んでから戻ってくるなり、『これだよ。』と、にっこりと笑って言った。

その手には、『サッポロ一番みそラーメン』と書かれた、あのオレンジ色の袋が持たれていた。

「えーっ!」と驚く私に、彼は続けて言った。

『忙しい時はこれが手っ取り早くて味だってバカにならないんだよ。』

『あんちゃん、旨いかい?』「はい、美味しいです!」

『そうかい、そりゃ良かった。〆はラーメンにしてやるよ。』

それから数年が経った頃・・・。

偶然観たテレビ番組で、あのスープは、メーカーの研究所で試行錯誤の末、作り上げられた味で、研究所の職員は、選ばれた味覚の達人でなければ務まらないことを知った。

それ以来、私が作る味噌鍋は、あのスープの味がお手本になっている。

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